小噺

彼女は生まれたときから一人だ。
気づいたら親も兄弟もいなかった。
ろくにしゃべれもしない。
けどとても綺麗な目をしている。


彼女は見たことのない風景を見るのが好きだ。


見たことのない風景を見ていくうちに、
彼女は大抵どこへだって渡っていけるようになった。
その綺麗な目が覚えている。
揺れる草木、身を隠す虫、長い舌でアリを食う動物。


はじめて見るもの何もかもを愛してる。